乳腺外科

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診療のご案内

【総説】

乳腺外科部長 大枝(おおえだ)良夫

当科では日本乳癌学会から認定された施設として乳癌を中心に、乳腺疾患全般の専門的な診断および治療をおこなっています。また乳癌症例以外にも乳腺線維腺腫や葉状腫瘍なども多く治療しています。

手術療法・薬物療法(化学療法)・放射線療法は日本乳癌学会ガイドラインやNCCNガイドラインなどのエビデンス(医学的根拠)に基づき、その三者を戦略的に構築して集学的治療をおこなっています。また患者さんの個人個人の状態に応じた個別化治療に努めています。

個別化診療:癌の進行度とサブタイプにより治療内容を組み立てること
 癌の進行度(病期・ステージ、転移の有無など)
 癌のサブタイプ(リセプターを指標にした癌の性質)

☆詳細は巻末の「乳癌についての知識」をご参照して下さい。

早期乳癌に対しては、積極的に乳房温存術(部分切除+放射線療法)を施行しています。その割合は50%を優に超えています。超音波・CT・MRI等の最新機器を駆使して、整容性と根治性を両立した手術を実践しています。さらに腋窩リンパ節郭清を積極的に省略するためにセンチネルリンパ節生検をおこなっています。センチネルリンパ節生検は色素法とRI法の併用で高い精度と良好な成績を維持しています。

進行乳癌に対しては、術前化学療法や術前ホルモン療法を積極的におこない、乳房の温存率の向上と生存率の向上をめざしています。また術後補助療法も個別化診療を推進しています。

再発した乳癌に対しては、生存期間の延長とQOL(生活の質)を損なわないよう、抗癌剤治療、ホルモン療法、放射線療法等の集学的治療をおこなっています。

スタッフ

太枝 良夫 乳腺外科部長

医学博士
日本乳癌学会 乳腺指導医・専門医・認定医
日本外科学会 指導医・専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 検診マンモグラフィ読影認定医師
日本医師会認定産業医

中村 祐介 医師

医学博士
日本乳癌学会 乳腺認定医
日本外科学会 専門医
日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医

診断内容

乳癌の検査の流れについて

◎一度の受診で病理診断までの検査をセットとしておこないます。

● 乳腺専用の超音波は極めて小さい腫瘍の描出が可能で、続いて超音波ガイド下穿刺細胞診断・組織診断(針生検法・コアニードル生検)をおこないます。
● 乳癌に精通した病理医の常駐(常勤医)により極めて短期間に病理診断が可能です。
● 乳癌の診断が得られた場合、CT、MRI、骨シンチグラフィー等の最新機器を駆使して他臓器への転移の有無、手術前の進行度(病期)診断や術式の決定をおこなっています。

◎乳癌の診断がついてから手術までの期間はできる限り短縮して 2~3 週を基本にしています。

マンモグラフィ

触診では分からないくらいの小さな癌や、癌によく認められる石灰化を見つけることができます。

乳腺超音波

触診では分からないくらいの小さな癌を見つけることができます。

乳癌の手術について

乳癌の手術法は、乳房部分切除術(温存術)乳房全切除術があります。

乳房部分切除術をおこなう場合には、切除標本の切除断端を術中迅速組織診断(病理医に待機していただき、特別な手法により短時間に病理診断をおこなう)をおこない、確実性・安全性を確保しています。さらに永久標本として二重確認しています。

下記は永久標本の組織診断にて5mm 全割面で癌分布状況を確認した結果、残念ながら全切除となった乳癌(特殊な乳癌:浸潤性小葉癌)の事例です。

☆ 以上のように徹底した(詳細な)病理検索をおこない、がん遺残の可能性を極力下げる努力をしています。
☆ 乳房部分切除術をおこなった場合には原則的に温存乳房に対し外来で放射線治療をおこないます。
☆ 乳房温存術が適応でない方、もしくは希望されない方には乳房全切除術をおこないます。
☆ 術後に乳房再建術をおこなうことも可能です(他院の形成外科と連携しておこないます)

センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節とは:癌からのリンパ管流が最初に流れ着くリンパ節のことで、癌が最初に転移するリンパ節と考えられています。日本語では前哨リンパ節,見張りリンパ節、中間リンパ節などと呼ばれています。まさに腋窩リンパ節への転移を見張っているリンパ節のことです。

乳癌手術において腋窩(腋の下)リンパ節郭清は重要ですが、これにより1~2割の方に腕のしびれ、腫れ、痛みなどの後遺症が残ります。そのため、あきらかなリンパ節転移がない方(CT画像において腋窩リンパ節転移陰性と判断された場合)を対象として、アイソトープと色素により癌細胞が最初に流れつく、リンパ節(センチネルリンパ節)を染めて摘出し、これに癌細胞がなければ、他の腋窩リンパ節郭清を省略しています。現在のところ、センチネルリンパ節の発見率は99%以上ですが、センチネルリンパ節が見つからない場合は通常のリンパ節郭清をすることになります。また、5%以下の確率ですが、手術後の詳しい検査でリンパ節転移が発見され、再手術を要する場合もあります。

当院においてセンチネルリンパ節生検は、適応症例に対して乳房の手術をする前に外来局所麻酔下におこなう場合と乳房の手術と同時に全身麻酔下におこなう場合があります。 局所麻酔下センチネルリンパ節生検の最大の利点は、転移の有無に関する詳細な病理検索をおこなうことにあります。手術中に行う術中迅速組織診又は細胞診では時間の制約があり詳細な検索ができず、偽陰性(実際には転移があるのに、転移がないと判断してしまうこと)を生ずる可能性があります。この場合は再度の入院、手術(腋窩リンパ節郭清)が必要となることがあります。この非侵襲性手術である局所麻酔下センチネルリンパ節生検は太枝のオリジナルな手法で、1999 年9月より開始しました。この術式の有用性を学会にて発表し、啓蒙活動をおこなってきました。 

⇒センチネルリンパ節生検法を導入した当院における乳癌日帰り手術 第 10 回日本乳癌学会総会(B-171,名古屋,2002.7.5-6) 

⇒局所麻酔下のセンチネルリンパ節生検法と乳房部分切除術の逐次療法による日帰り手術の検討 DAY SURGERY OF EARLY BREAST CANCER TREATED WITH BREAST CONSERVING OPERATION FOLLOWING SENTINEL LYMPH NODE NAVIGATION BIOPSY UNDER LOCAL ANESTHESIA、日本臨 床 外 科 学 会 雑 誌 = The journal of the Japan Surgical Association 66(7), 1528-1533, 2005-07-25)
現在では一つの治療選択枝として定着し、一部の病院に広がってきています。
また 10 年間の蓄積症例に対し、2008 年 4 月、ベルリンでおこなわれた EBCC-6(European Breast Cancer Conference(第 6 回欧州乳癌学会) 2008.4.15-19)にて 「Efficacy of Sentinel Lymph Node Biopsy Under Local Anesthesia Prior to Breast-conserving Surgery for Early Breast Cancer( 早期乳癌における乳房切除手術に先行した局所麻酔下センチネルリンパ節生検法の有用性)」が発表し評価されました。 

通常の場合は乳腺手術時にセンチネルリンパ節生検法をおこなっています。

薬物療法

術前薬物療法

しこりが大きく温存療法が適応にならない方を対象として、手術前に抗がん剤やホルモン剤を3~6ヶ月間使用したのちに手術をする治療法です。この治療法でしこりが十分に小さくなれば、温存術ができるようになる場合があります。これらの薬剤は再発予防のために術後に使用するものと同じなので、薬剤が患者さんに合うかどうか、あらかじめ調べられるという利点もあります。

術後薬物療法

術後に再発する可能性をできるだけ低くするためガイドラインに則りホルモン療法、化学療法などの薬物療法をおこなっています。基本的には2013年のSt. Gallenコンセンサス会議(2年に一度、スイスのSt. Gallenで開催される国際会議)で推奨されたサブタイプ別の薬物療法を行っています。副作用等に関しても、ガイドラインに則り適切に対応しております。それぞれの患者さんの状態、希望に適うよう十分なインフォームドコンセントをおこなっています。

外来化学療法室

これらの乳癌の化学療法(薬物療法)は外来でも安全に受けることができます。抗がん剤の副作用を抑える薬剤も飛躍的に進歩しています。それまでの社会生活を送りながら治療ができるようQOL(quality of life:生活の質)を重視しています。
本棟2階にある外来化学療法室(リクライニングチェアー+ベッドの合計20床)にてお待ちすることなく、ゆとりを持って受けていただくことが可能です。

放射線治療

乳癌領域における放射線治療には、大きく分けて下記の3つの目的があります。

1) 乳房温存手術後の、温存した乳房への放射線治療
2) 進行乳癌に対する乳房切除後の放射線治療
3) 転移、再発乳癌に対する放射線治療

1)乳房温存手術後の放射線治療について
乳房温存手術においては手術後の放射線治療により乳房内の再発が約1/3に減少することが証明されています。原則として術後放射線治療をおすすめしています。(術後放射線療法を省略する場合:かなり限局した微小非侵襲がんや超高齢者など)
具体的な治療手順としては、手術終了後、手術創が治癒し、摘出標本の病理診断結果が判明した後(術後補助化学療法が必要な場合は化学療法終了後)、放射線治療科を受診し、治療計画を立てます。通常は温存した乳房全体に、総線量50グレイ(グレイとは放射線量の単位)を25回(平日5日間、合計5週間)にわけ、1回線量2グレイ照射します。1回の照射時間は1分程度で通院の時間以外は通常の生活が可能です。さらに、病理診断結果の所見によっては、切除前に乳癌病巣があった場所に追加照射(ブースト照射)をおこなう場合があります。

2)進行乳癌に対する乳房切除後の術後放射線治療
乳房全切除術の後でも、胸壁やリンパ節などから再発をおこすことがあります。
具体的に再発の危険性が高いとされるのは腋窩リンパ節転移が4個以上の場合、腫瘍が5cm以上の大きさ場合には抗がん剤治療やホルモン療法の他に放射線治療をおこなうことで再発のリスクを下げることができます。
治療は、手術創が治癒した後に、手術終了後3~4週で放射線治療を開始します。摘出標本の病理診断結果で術後補助化学療法が必要な場合には化学療法終了してからおこないます。腫瘍があった側の胸壁と鎖骨上窩に総線量50グレイ(グレイとは放射線量の単位)を25回(平日5日間、合計5週間)にわけ、1回線量2グレイ照射します。

3)転移、再発乳癌に対する放射線治療
乳癌の脳転移、骨転移、局所再発(胸壁、リンパ節)に対して、放射線治療をおこなう場合があります。 脳転移に対しては特殊な放射線治療(全脳照射やガンマナイフなど)が有効です。

照射線治療に伴う副作用

乳癌手術後の乳房や、胸壁におこなう照射線治療にともなう副作用としては、皮膚炎、倦怠感、放射性肺炎などがあります。皮膚炎はほとんどの患者さんで照射した部位に限られて見られますが、重篤なものではありません。その他、頭髪の脱毛や吐き気、めまい等はなく、白血球減少もほとんどおこりません。

患者会 にじいろリボンの会

「にじいろリボンの会」は乳癌、婦人科がんの患者さんの情報交換を目的とした会です。患者さん同士の交流を通して、病気や不安と闘っているのは自分一人でないことを知っていただく身近なサポート資源となっています。対象は当院に入院および通院中の患者さんやご家族が対象です。
30分程度の医療者(看護師・医師・薬剤師・臨床心理士など)によるミニレクチャーのあと茶話会を行 っています。
ミニレクチャーは毎年各会のテーマを決めて行っています。「知らなかったことを知ることができた」「楽しくリフレッシュできた」といった声をいただいています。
茶話会では、不安な思いを語りながら涙されることもありますが、いつも先輩患者さんが寄り添い、優しく声をかけてくれています。同じ目線で自分の思いを語り、聴いてもらえることは大きな心の支えになっています。

乳腺外来の知らせ

女性の12人に1人はなると言われている乳癌は、女性にとって身近な病気です。
女性における癌の罹患率は乳癌が第1位であり、女性における癌の死亡率も65歳までの年代では第1位で今後も増加するものと推定されています。
少しでも気になる症状があれば、乳腺外来を受診してください。
日本乳癌学会認定の乳腺専門医が診察に当たります。

□ 乳房に「しこり」を触れる。
□ 腕を挙げたとき、乳房に「えくぼ」「ひきれ」がある。
□ 乳房に痛みがある
□ 乳房の皮膚に赤みや変色がみられる。
□ 乳首からの分泌(レンガ色)がある。
□ 乳首にびらんや、ただれを認める。
□ 左右の乳首の位置がずれている
□ わきの下のしこり(硬いリンパ節)を触れる。

検査の流れ

● 問診
● 視触診
● マンモグラフィー・乳房超音波検査などの画像診断
● 穿刺吸引細胞診断・穿刺組織診断(針生検法)による病理診断

一度の受診ですべての検査をセットとしておこないます。初診から手術までの期間はできる限り短縮して2~3週間を基本にしています。

乳癌についての知識

<乳癌についての知識>
女性の12人に1人はなると言われている乳癌は、女性にとって身近な病気です。
そこで乳癌に対する情報・知識を読んでください。
乳癌になった場合は担当医から十分に説明をしてもらい、自分の進行状況などがどういう立ち位置にいるかを認識することです。多くの場合は十分に治療できる状態にあるはずです。乳癌の知識を持つことが一番の不安解消になると信じています。

増え続ける乳癌

「がん」は「心疾患(心筋梗塞)」、「脳血管疾患(脳卒中)」、と並んで日本人の死因の中でも最も多い疾病の一つです。その中でも乳癌は年々増加傾向にあります。
女性における癌の死亡率も65歳までは第1位(下記の表の左側のグラフ)また女性における癌の罹患率は乳癌が第1位であり(下記の表の右側のグラフ)で今後も増加するものと推定されています。日本のがん統計において予測がん罹患数(2015 年)は年間で乳癌は 89,400 人、予測がん死亡数(2015 年)は年間 13,800 人にもおよんでいます。

出典
1) 厚生労働省大臣官房統計情報部編:平成 22 年人口動態統計
2)がん研究振興財団発行:がんの統計’11, 27-28, 2011
3)国立がん研究センターがん対策情報センター

年代でみますと、乳癌の罹患率は30歳台後半から増加し始め、40歳台後半から50歳台前半でピークになります。家庭や仕事など多くのものを抱えている女性にとって重大な問題となります。さらに、閉経後の60歳台前半で再びピークを迎える傾向があり、日本人女性特有な特徴となっています。全体的には欧米のように閉経後も増加する傾向にあります。
また、下図のように20歳台から35歳以前にも乳癌にかかることがありますので注意が必要です。

乳癌が増加した理由

近年、日本女性に乳癌が増加した主な理由として、食生活の欧米化や、女性の社会進出があると考えられています。食生活の欧米化に伴い、高タンパク・高脂肪の食事が増え体格が良くなった結果、初潮年齢が早くなり閉経年齢も遅くなる人が増えました。さらに、女性の社会進出の増加によって、妊娠・出産を経験する人が減少し、女性が生涯に経験する月経の回数が多くなりました。月経中はエストロゲンが多量に分泌されるため、この回数が増えたことが乳癌の発生と進行に影響を及ぼしている可能性があります(乳癌の原因ははっきりと解明されていませんが、女性ホルモンの 1 つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が乳癌のがん細胞を増殖させることが知られています)。下記に表を示しました。下記の表で赤丸印が大きく影響している要素です。

乳癌と診断されたら

医師に「乳癌の疑いがある」といわれれば、不安になったり、恐怖感を抱いたりするのは当たり前です。だからといって、むやみに怖がる必要はありません。乳癌はがんの中では比較的治療後の生存率が高いといわれ、早期発見、適切な治療を受ければ完治する可能性も高いことが知られています。
手術治療を受けた方の一般的な予後としては、5年生存率(相対生存率)として、臨床病期Ⅰ期:99.3%、 Ⅱ期:94.5%、Ⅲ期:73.9%、Ⅳ期:43.2%(合計 93.2%)と報告されています(公益財団法人がん研究振興財団 2013)。
また、国立がんセンター東病院で 1994 年~2006 年に手術を受けた乳癌患者 2233 名の 10 年全生存率は、臨床病期 0 期:95%、Ⅰ期:95%、Ⅱ期:82%、Ⅲ期:58%、Ⅳ期 13% (2012 年 5 月調査、平均観察期間 105 カ月)でした。 

☆がんへの不安を解消する一番の手立ては、乳癌専門医のいる病院を受診して正確な診断をしてもらうことと、きちっとした説明を受けることです。そのうえで今後の方針などが決まれば気持ちもかなり落ち着くのではないでしょうか。

非浸潤癌と浸潤癌

通常の乳癌は乳管上皮細胞から発生し、がん組織の広がり方によって「非浸潤癌」と「浸潤癌」に大きく分けられます。

<非浸潤癌>

早期の乳癌で、癌細胞が乳管の内側にとどまっている状態です。予後が良いことが知られており、手術で癌を切除すれば再発や転移をすることはほとんどありません。後述する乳癌の病期(ステージ)では 0期にあたります。生命予後は良いのですが、乳管内を網目のように広く這っている場合には乳房部分切除術(乳房温存手術)が不可能となることがあります。

<浸潤癌>

癌細胞が増殖して乳管の壁(基底膜)を破り周囲の組織に広がった状態であり、血管やリンパ管などの脈管に侵入するため、再発や転移をする危険性があります。

非浸潤癌であるか、浸潤癌であるかは、手術前の検査である程度は予想できますが、正確に診断するのは難しく、手術後の切除標本の病理検査で診断されます。

乳癌の病期(ステージ)

しこりの大きさ、リンパ節への転移状況、ほかの臓器への転移の有無という3つの要素によって分類したものを、「病期(ステージ)分類」と呼びます。個々の患者さんの病期は、乳癌が確定診断された後にCT検査、MRI検査、骨シンチグラフィー検査などで判定され、この結果に基づいて治療方針が決定されます。手術がおこなわれた場合には、手術後の病理検査の結果によって最終的な判定がなされ、これに基づいて薬物療法(抗癌剤治療、内分泌治療)や放射線治療などの補助療法が検討されます。担当医に丁寧に説明してもらうことが肝要です。

<出典>癌取扱い規約抜粋 消化器癌・乳癌 第 11 版より作成

乳癌のサブタイプ

乳癌細胞がもつ遺伝子の特徴によって、乳癌を分類したものを「サブタイプ」と呼びます。サブタイプは手術前や手術後におこなわれる病理検査(組織診)で、がん細胞の表面にあるタンパク質を調べて判定されます。基本的には、ホルモン受容体、HER2 タンパク、Ki-67 などの増殖能の組み合わせによって、下の表に示すように大きく5つのサブタイプに分類できます。このサブタイプに基づいて、ホルモン療法(内分泌療法)や抗がん剤療法(化学療法)、分子標的療法(抗 HER2 療法)などの薬物療法が選択されます。

St. Gallen コンセンサス会議で国際的な薬物療法のガイドラインが2年ごとに出されています。日本乳癌学会でも St. Gallen の治療指針を参考にガイドラインの見直しがおこなわれています。しかし、現在おこなわれている標準治療も完全なものではなく、日々研究が進み新しい治療法の開発が行われています。

2013年の St. Gallen コンセンサス会議で推奨されたサブタイプ別の薬物療法は表に示す通りです。

<ルミナルAタイプ>

ホルモン受容体陽性タイプは総じて Luminal(以下ルミナル)タイプと呼ばれ、乳癌全体の60~70%程度を占めるもっとも多いタイプです。このうち、増殖能力が低いルミナル A タイプは、ホルモン受容体陽性乳がんの典型的なタイプといえます。ホルモン受容体をもつ乳癌はホルモン療法が推奨されます。なお、リンパ節転移が4個以上ある場合など、がん細胞の悪性度が高い場合は再発リスクが高くなるため、化学療法の追加が考慮されることもあります。

<ルミナルBタイプ(HER2陰性)>

ルミナル A タイプと同様にホルモン療法が効果的ですが、ルミナル A タイプに比べて増殖能力が高いため、多くの場合ホルモン療法に加えて化学療法もおこないます。化学療法を実施する場合にどのようなレジメンが良いかについては、ホルモン受容体の程度や、再発のリスクなどを判断して選択します。

<ルミナルBタイプ(HER2陽性)>

ホルモン受容体と HER2 のどちらも陽性であるため、ホルモン療法と抗 HER2 療法で効果が期待できます。また、抗 HER2 療法をおこなう場合には、化学療法を併用することが推奨されています。

<HER2陽性タイプ>

ホルモン受容体陰性で(ルミナルタイプではない)HER2 陽性の乳癌は、乳癌全体の10%程度を占めます。ホルモン受容体をもたないため、ホルモン療法の効果は期待できません。予後不良と言われてきた HER2 タイプの乳癌は抗 HER2治療薬の開発により予後が大幅に改善しました。抗 HER2 療法と化学療法の併用が推奨されています。

<トリプルネガティブタイプ>

攻撃の標的となるホルモン受容体と HER2 タンパクのいずれも持たないため、一般的に化学療法が推奨されます。このタイプは、手術後1~3年で再発することが多いことから、予後が悪いがんと思われていますが、現在、どのようなレジメンがもっとも効果が高く安全に行えるか、様々な研究報告がなされています。 

再発リスク分類

がんを手術できれいに取り切れたと判断しても、再発する可能性はゼロにはなりません。乳癌の再発率は5年以内に約20%、特に2~3年以内が多いことがわかっています。
再発に関する研究は、従来は St. Gallen コンセンサス会議で低リスク、中間リスク、高リスクに分類されて報告されてきました。中間リスク、高リスク群として再発リスク因子は①年齢:35歳 未満、②病理学的腫瘤径:2cm より大、③組織学的悪性度グレード:2~3、④リンパ節転移:あり、⑤脈管侵襲 :あり。
これらの再発リスク因子を考慮しながら術後の補助療法が決められていましたが、現在では前述したような進行度(ステージ分類)だけでなく、のサブタイプが影響しているといわれており、術後補助療法が決定されます。

病院選びの基準

乳癌の治療に関しては、乳房の専門病院のほか、乳腺外科や乳腺外来のある施設がひとつの目安になります。その中でも、乳癌の治療を多く手がけているかどうかがポイントです。年間50~100例以上手術をしている病院であれば、乳房の病気の専門医がいると考えられます。専門医とは日本乳癌学会が認定している指導医、専門医、認定医を指します。またNPO法人の様々な患者相談窓口に連絡してみるのもよいでしょう。

2017.2
文責:乳腺外科部長 太枝良夫

診療受付時間 8:30~11:30
(土・日・祝祭日・年末年始を除く)

待ち時間短縮のため、事前に予約をお取りいただき、ご来院されますようお願いいたします。
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千葉県済生会習志野病院 〒275-8580 習志野市泉町1-1-1  TEL:047-473-1281(代表) 
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