心臓血管外科手術では、通常の胸骨正中切開法による心臓大血管手術だけでなく、低侵襲心臓・大血管手術を行っています。病態や手術の危険性などを考慮し、最適な手術術式を選択します。

低侵襲心臓手術（MICS）
適応：弁膜症、冠動脈バイパス術、メイズ手術、左心耳閉鎖術、心臓腫瘍など
胸骨を切開せず、右前胸部を小切開して心臓手術を行います。出血量(輸血量)が少なく、体への負担が少ないため、早期の社会復帰が可能となります。当院では積極的に低侵襲心臓手術を推進しています。

⇒ 手術の詳細（適応・入院期間など）について相談を受け付けています。
e-mail: keisd@chiba-saiseikai.com（石田　敬一）

当科で行っている手術と適応となる疾患

弁置換術・弁形成術
適応：大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症・閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、これらの複合弁膜症疾患。
僧帽弁閉鎖不全症に対しては、僧帽弁形成術を第一選択としています。
弁膜症は心臓弁の異常により、息切れ、呼吸困難、易疲労感などの症状をおこし、最終的には心不全となる疾患です。弁置換術や弁形成術は、症状を改善し、心不全を予防することで生命予後を改善します。症状がなくとも、心拡大や心機能低下が認められる場合は、心不全をおこす危険性が高いため外科治療が勧められます。

冠動脈バイパス術CABG
適応：労作性狭心症、陳旧性心筋梗塞、急性冠症候群（急性心筋梗塞・不安定狭心症）
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は冠動脈狭窄・閉塞によりおこる疾患です。両側内胸動脈を使用し、完全血行再建を目指したオフポンプ（人工心肺を使用しない）CABGを第一選択としています。また、左冠動脈前下行枝単独病変に対しては、左内胸動脈を用いた低侵襲冠動脈バイパス術（MIDCAB）を行っています。

低侵襲メイズ手術・胸腔鏡下肺静脈隔離術＋左心耳閉鎖術・胸腔鏡下左心耳閉鎖術
適応：発作性・慢性心房細動
心房細動は動悸、胸部不快感、めまいなどの症状だけでなく、心不全や脳梗塞をおこす不整脈です。洞調律の復帰、脳梗塞の予防、抗凝固療法の離脱を目指し、単独心房細動に対して低侵襲メイズ手術や胸腔鏡下肺静脈隔離術＋左心耳閉鎖術など低侵襲手術を行っています。また、抗凝固療法の維持が困難な症例に対して、胸腔鏡下左心耳閉鎖術を行っています。弁膜症や冠動脈疾患に合併した心房細動に対しては、弁膜症手術や冠動脈バイパス術に加えて、積極的にメイズ手術＋左心耳閉鎖術を行っています。

閉塞性肥大型心筋症に対する心筋切除術
左室心筋の肥大により左心室から血液がでる部分（流出路）が狭くなる場合があり、胸痛、呼吸困難、動悸、立ちくらみ、失神をおこすことがあります。外科的に厚くなった心筋を切除します。

重症急性肺塞栓症に対する肺動脈血栓除去術
下肢の血栓（深部静脈血栓）が肺動脈に塞栓する疾患です。重症の場合、失神、意識傷害、血圧低下や臓器傷害をおこします。外科的に肺動脈血栓を摘出します。

ステントグラフト内挿術・人工血管置換術
適応：胸部・腹部大動脈瘤・大動脈解離
急性大動脈解離や上行・弓部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行っています。胸部下行大動脈瘤や腹部大動脈瘤に対しては、低侵襲なステントグラフト内挿術を積極的に行っております。さらに、ステントグラフト内挿術では、穿刺法でも手術を行っており、創が非常に小さいため（5mm）、早期の社会復帰も望めます。また、ステントグラフトの周囲に漏れがないよう、必要に応じて瘤内への流入血管をコイルで詰める工夫を行っています。

末梢血管バイパス術
適応：閉塞性動脈硬化症
下肢の動脈の狭窄や閉塞による血流障害が原因で、歩行時の下肢の痛みや冷感を生じる疾患です。当科では血栓内膜摘除術や下肢動脈バイパス術（自己静脈や人工血管を用いて血流を改善させる手術）を行っております。病変の状態により血管内治療（ステント留置）と外科手術を組み合わせたハイブリッド手術も行っています。

千葉県済生会習志野病院　外来診療担当表